陸上・短距離走のチューブトレーニング!走力アップに役立つ筋肉の鍛え方
短距離選手の記録を向上させるには、下肢を中心とした筋力トレーニングが欠かせません。速く走るための原動力が筋力であり、短距離走においては、最大出力のアップが記録向上のカギを握ります。
しかし、フリーウエイトを使用した一般的な筋力トレーニングだけでは、実際のスプリント動作で役立つ「使える筋肉」を作るのは難しいでしょう。
今回は指導者の方向けに、短距離選手の走力アップに役立つ筋肉の鍛え方を解説します。実際のスプリント動作に近い形で抵抗をかけるトレーニング法や、フリーウエイトよりも安全で快適な筋肉の鍛え方を紹介しますので、ぜひ選手の記録向上に役立ててください。
短距離走の選手が鍛えるべき筋肉は?
短距離選手の走力を高めるには、スプリント中の後方、前方への脚全体のスイング速度をアップさせる必要があります。そのためには、大腿を後方に振る「股関節伸展」、大腿を前方へ引き上げる「股関節屈曲」に関わる筋肉を鍛えなければなりません。
股関節伸展を強化するには、ハムストリングス・大臀筋・内転筋のトレーニングが重要です。また、股関節屈曲を強化するには、腸腰筋を鍛える必要があります。
さらに、スタートダッシュでは地面を強く蹴り出すピストン系の動作が重要になりますので、大腿四頭筋の強化も大切です。加えて、腕の振りや体の安定も重要ですので、体幹(腹筋・背筋)の筋力アップも必要になってきます。
- ハムストリングス : 大腿を後方へ振る「股関節伸展」の働きをする
- 大臀筋 : 大腿を後方へ振る「股関節伸展」の働きをする
- 腸腰筋 : 大腿を前方へ引き上げる「股関節屈曲」の働きをする
- 大腿四頭筋 : 地面を強く蹴り出す「膝伸展」の働きをする
- 体幹(腹筋・背筋): 体の軸を安定させ腕の振りを良くする
短距離選手の筋力トレーニングで注意すべき点
短距離走の筋力トレーニングを行う際は、大腿を後方へ振る「股関節伸展筋」と、大腿を前方へ引き上げる「股関節屈曲筋」をバランス良く鍛えることが大切です。「股関節伸展筋」と「股関節屈曲筋」は拮抗筋であるため、どちらかだけの筋力が強くなると、拮抗のバランスが崩れて強化が難しくなります。
たとえば、股関節の伸展筋力に対して屈曲筋力が弱すぎると、後方へ振り上げた脚の戻しが遅くなり、股関節伸展筋力を十分に引き出せない可能性があるのです。拮抗筋は同時に鍛えるのが鉄則となりますので、指導者の方は十分に注意してください。
陸上・短距離走には「チューブトレーニング」が最適
短距離走の記録を向上させるには、実際の競技動作に近い形で抵抗をかけるトレーニングが必要です。いくら筋肉が発達していたとしても、実際のスプリント動作で役立つ「使える筋肉」になっていないと、走力アップには繋がりません。
短距離選手の走力を高める代表的なトレーニング法として、チューブを利用した「レジステッド走」があります。レジステッド走とは、後ろからチューブで引っ張られながら走るトレーニングであり、スプリント動作における加速力・最大スピードでのパワーを高めるのに効果的な方法です。
スクワットやベンチプレスなどの一般的な筋力トレーニングは週2回を目安とし、レジステッド走は、フィールド練習の一部として随時行うと良いでしょう。
走力を爆発的に上げる「レジステッド走」
それでは、チューブを利用した「レジステッド走」のやり方を紹介します。実際のスプリント動作に近い形で抵抗をかけることによって、筋力・パワーの向上はもちろん、走力アップに必要な筋肉の収縮や体のポジションにも意識を向けることが可能です。
また、レジステッド走を行った直後に通常のスタート練習を行うことで、地面を力強く蹴る感覚が養われます。下の動画が参考になりますので、ぜひご覧ください。
【動作のポイント】
- 加速に最適な体の傾きで行う(頭から踵までを一直線にする)
- 体の前で左右の脚が素早く入れ替わるイメージで行う
- 脚さばきに時間がかかりすぎると上手く進めなくなる
- 短い時間で大きな力を地面に伝えられるかが重要
- 20歩を1セットとし、3セットを目安に行う
走力を高めるための「チューブトレーニング」
チューブトレーニングは、走力アップに必要な筋肉を部位別に鍛えるのにも役立ちます。具体的には下記の6種目がおすすめです。ゴムの張力を利用した負荷のかかり方なので、関節への負担を軽減しながら筋肉を鍛えられます。1回のトレーニング時間は50分以内とし、2〜3日おきに週2回を目安に取り入れると良いでしょう。
1.クラブウォーク
クラブウォークは、股関節まわりの筋肉を強化するチューブトレーニングです。
【動作のポイント】
- 膝の上辺りにチューブを装着する
- 上半身を少し前傾させ、膝を軽く曲げた状態にする
- 足幅は腰幅よりも少し広めに開いておく
- 膝も足と同じ幅に開く
- 膝の角度を変えないようにしながらカニ歩きをする
2.レッグカール
レッグカールは、ハムストリングスを強化するチューブトレーニングです。
【動作のポイント】
- バンドをピンと張った状態から始める
- 膝を曲げ踵をお尻にできるだけ近づける
- 膝を曲げた状態で2~3秒キープする
- 力強く曲げてゆっくり戻す
- お尻が持ち上がらないように注意する
3.ドンキーキック
ドンキーキックは、大臀筋を強化するチューブトレーニングです。
【動作のポイント】
- 片脚の土踏まずにバンドを引っ掛ける
- 息を吐きながら脚を力強く後ろに伸ばす
- 伸ばした位置で2~3秒キープする
- キープ中は尻をキュッとしめておく
- キープが終わったら息を吸いながら戻す
4.ニーアップ
ニーアップは、腸腰筋を強化するチューブトレーニングです。
【動作のポイント】
- 体を真っ直ぐにして片脚立ちになる
- 太腿を水平な位置から上下に動かす
- 姿勢を崩さずに正確に速く動かす
- 軸足はしっかり固定しておく
- 膝を高く上げ過ぎないようにする
5.スクワット
スクワットは、大腿四頭筋を中心に下半身全体を強化するチューブトレーニングです。
【動作のポイント】
- つま先を少し外側に向け、胸を張り背筋を伸ばす
- 息を吸いながらゆっくりしゃがむ
- しゃがむ深さは、膝が90度になるくらいまで
- しゃがんだら、息を吐きながら力強く立ち上がる
- 立ち上がる際は、膝を伸ばし切る一歩手前で切り返す
6.トランクローテーション
トランクローテーションは、体幹を強化するチューブトレーニングです。
【動作のポイント】
- チューブを両手の親指に引っ掛けて四つん這いになる
- 脚を横に大きく開きバランスをとる
- 片腕を横に上げながら胸を開きバンドを伸ばす
- 上体が真横を向き、両腕は伸ばされた状態となる
- 上記の状態になったら、ゆっくり戻す
トレーニングチューブ(ゴムバンド)の注意点
トレーニングチューブ(ゴムバンド)は、走力を高める理想的なアイテムです。しかし、注意点もあります。チューブはゴムが原料であるため、使用環境や使用方法により劣化が進行し、切れる可能性があるのです。
たとえば、直射日光や高温多湿な場所で長期間保管していると、劣化が進行して切れやすくなります。また、劣化していなくても、強く引っ張り過ぎて切れてしまうこともあります。したがって、トレーニングチューブ(ゴムバンド)を選ぶ際には、伸縮性や耐久性、安全性をチェックして選ぶ必要があるのです。
おすすめのトレーニングチューブ(ゴムバンド)
陸上・短距離走におすすめのトレーニングチューブ(ゴムバンド)を紹介します。具体的には下記の5種類です。どのチューブも、伸縮性・耐久性・安全性に優れていますので、ぜひトレーニング目的に合ったチューブを選び、走力アップに役立ててください。
1. VRTXバンド
レジステッド走にも、部位別の筋力トレーニングにも使用できるトレーニングチューブ。VRTXバンドは米国特許取得の新素材を使用しているため、切れにくく安全性が高いのが特徴です。
米特許取得の新感覚素材を採用。日本グッドデザイン受賞。切れにくく、肌に優しい。安全性と快適性を実現。
◉「VRTX BAND」の選ばれる理由- 肌触り良く、切れる心配なし: 米特許取得の新感覚素材を使用。切れにくく肌に優しい。ゴムチューブの劣化や肌への問題を解消し、トレーニング初心者でも安全かつ快適に利用可能。
- 幅広い強度バリエーション: 7段階の強度設定。1kgから91kgの負荷調整可能。初心者から上級者、老若男女を問わず、種目に応じてバンドを使い分け、多彩なトレーニングが実現。
- トレーニング動画100本以上を公開: 各領域のトレーナーが使用方法を紹介する動画を100本以上公開中。筋力トレーニングに限らず、ストレッチや競技パフォーマンス向上にも活用可能。
また、負荷のかかり方が非常に滑らかであり、今までにない快適で質の高い刺激を筋肉に与えることができます。さらには、強度が「7段階(1〜91kgまで)」に分かれているため、初心者〜上級者までオールマイティに対応可能です。
2. スプリントチューブ
レジステッド走を行うのに適したトレーニングチューブ。初速・立ち上がり時のたわみ・あおりがなく、スムーズに負荷をかけることができます。また、トレーニング対象者のレベルに合わせて負荷をコントロール(引く強さ、引き続ける距離)することが可能です。
3. リリースフックハーネス
負荷をかけたところからリリースできるトレーニングチューブ。スタート前に負荷をかけておくことで、ピッチを使わずに加速する感覚を養えます。また、負荷を調整しながらリリースすることで、速度に合わせた筋力発揮能力の向上に効果的です。
4. ヴァリアブルレジスタンストレーナー
チューブが長く取っ手もあるため、レジステッド走の際に補助者がサポートしやすい設計になっています。チューブが長いので、ある程度の速度が出たのちに負荷をかけることができ、より高いスピードレベルでのパワートレーニングが可能です。
5. ストループス インセインボルト2 ミディアム
ウエストベルトを腰に巻きレジステッド走を行うことで、スライドとピッチを最大化するための筋肉を強化できます。スプリント動作にそのまま抵抗をかけられるため、一般的なウエイトトレーニングでは鍛えることが難しい競技特性動作の強化が可能です。
チューブトレーニングで効率よく走力アップを目指そう!
短距離走の選手がチューブトレーニングを行うことで、実際のスプリント動作に近い形で抵抗をかけられるため、効率よく走力アップを目指せます。
また、部位別のチューブトレーニングを行うことによって、関節への負担を軽減しながら、速く走るための原動力となる筋力を高められるのです。
指導者の方は、ぜひ当コラムを参考にしてチューブトレーニングを取り入れ、短距離選手の記録向上に役立ててください。